どんなに偉大な実績を残した馬であっても、
みんな最初は「新馬」である事には変わりなかったはずであり、
だからこそ新馬戦には意味があると考え、
ロマンという安っぽい価値観を当てはめていた時代が私にはありました。
その事を最も如実に表した例と言えば、
「後のG1ホースのデビュー戦を観戦した」というステータスに対する、
憧れに近い感情であったと思います。
惜しい馬として、フサイチジャンクが思い出されます。
この馬のデビューは2005年12月11日、曇天下の中山5レースでした。
徹夜麻雀明けでの疲れきった体で、のこのこと中山へ赴いた記憶があります。
この日のメインは朝日杯フーチュリティステークスだったのですが、
フサイチジャンクの知名度の高さがあった故に、
新馬戦はメインレース並の盛り上がりを見せたように感じました。
特にパドックでの集客は異常で、何が楽しいのか、
やれ関口会長だ、やれハマチャンだとのたまう人も大勢来ていたようです。
フサイチジャンクにとって、翌年の皐月賞はG1制覇の最大のチャンスでした。
私はこの馬を買いませんでしたし、レース直後は何とも思わなかったのですが、
当時を振り返ると、
あぁ惜しかったんだなぁなんてぼんやりと考えてしまう瞬間も確かにあります。
私がデビュー戦を見た馬が、G1を制覇するという筋書がようやく実現したのは、
今年のNHKマイルカップでした。
勝ったのはピンクカメオと四位騎手。17番人気という低評価を覆す勝利でした。
ピンクカメオのデビューは2006年7月1日、福島の5レースです。
この日の朝、私は東京から遠征し、
小生意気にも旅打ち気分で福島駅へ降り立ち、
小雨が降る中、ふわふわと福島競馬場へ足を運んだ記憶があります。
旅は道連れ世は情け、旅の恥は掻き捨て、書を捨てよ町へ出よう、
こんなフレーズを頭の中でぐるぐるとかき回しながら、
新鮮な気持ちで競馬に向き合いました。
そこで見た新馬戦が、ピンクカメオのデビュー戦だったのです。
なんだか勘違いしている人も多い気がしていますが、
柵のあちら側とこちら側はまるで別の世界と考えるべきで、
こういう出会いに縁を感じる人は、
ある意味幸せな自己中心的主義者だと思います。
しかしながら、
競馬で負けたあとの夕暮れの福島駅前で、
いつまでもベンチでぼんやりと腰掛けていた当時の自分を思い出すと、
こと競馬に関しては、自己中心的に生きるのも悪くないなと思われるのです。
また今年も、福島に行きたいと思います。
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