自分以外の何かに対し、ドラマ性を見出し、その魅力の虜になる人は数多いです。
スポーツ、芸能、政治等、例を挙げればキリがありませんが、
こと競馬に関してもそれは全く例外では無いようです。
昨年で言えば、ディープインパクトの走りに
夢や感動を抱いた人が多かったという事でしょうか。
有馬記念後の引退式に5万人もの人が残ったという事実から、それは明白です。
(5万、という数の信憑性はともかくとして。)
もちろん楽しみ方は人それぞれですし、
だからこそ新しい視点から生み出される魅力が存在するのですが、
競馬に関しては、馬券を買うという参加方法がある限り、
もっと別の楽しみ方をした方が良いと、私は思います。
言葉を付け足すとすると、
勝利に向かって死力を尽くす騎手、調教師、そして馬、
彼らを見ているだけで胸躍るのは理解できますが、
それでは競馬の楽しみを網羅したとは思えない、という事です。
競馬でしか味わえない楽しみとは言うまでも無く「予想をする事」だと思います。
単純に、見て、聞いて、感じて、そこから感動を味わいたいのならば、
数ある娯楽の中から競馬を選ぶ必要はありません。
映画やTVドラマといった、他人に魅せる事を生業としている商品が、
世の中にはありふれているからです。
自分の持ちうる知識から、どんなレース展開になるかを考え、
どの馬が最初にゴールを駆け抜けるかを予想した上で、レースを見る。
そこで、自分の予想と現実にどれだけの開きがあるかを考え、次へ活かす。
こうする事で馬の能力や騎手の特性を、もっと深く理解でき、
結果より深い楽しみを得られると、私は考えています。
AJCCにて1番人気のインティライミに騎乗し、
レース後のインタビューに答えた柴田善騎手のコメントに
注目した人は多かったのではないでしょうか。
「ずっと引っ掛かっていた。何を目指しているの?と思ったくらい。」
このコメントに対してどういった感想を持つか。
ドラマを求めるのならば、
やはりディープインパクトのダービー2着馬という事を頭に思い描き、
「今でもディープインパクトを追いかけているのではないか」
といった夢想を抱くのでしょうか。
それはそれで美しいですが、私はそうは思いません。
「何を目指すべきか、教えるのは調教師や騎手の役目のはず。
インティライミの方こそ、何を目指して走らされているのか聞きたかっただろう。」
ここまで書いたところで、ふと考え込んでしまいました。
競馬において私達は、一体何を目指せば良いのでしょうか。
きっとそれは誰かに教わるものではなく、自分で見つけるべき事なのでしょうね。
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