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2021年03月28日15:16 競馬Masters RSS




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[ 関谷泰正 ] 競馬場へ行こう - オヤジ

 

1999年10月3日。
当時高校生だった私は、エルコンドルパサーの凱旋門賞を見る為に、
ロンシャン競馬場にいました・・・というのはもちろん嘘で、
グリーンチャンネルに加入している友人宅で、
発走を待つという名目のもと、だらだらと徹夜麻雀をしておりました。

競馬は既に覚えていましたが、
エルコンドルパサーに特別な思い入れがある訳ではなく、
あくまで興味の焦点は
「日本馬が世界最高峰のレースでどこまで通用するか」でありました。
天邪鬼な私の事ですから、素直に声援を送るという行為に対して、
照れくささを覚えていたという気持ちもあったように思います。
競馬ファンなら誰しも通過したであろう、
「玄人ぶりたい時期」真っ盛りでもあった私。
「やっぱりモンジューは強いからなぁ」などど、
分かったような口をききながら、ツモ、2000、4000。

発走が近づくと、友人達とリビングに移動。
数え切れないほど遊びに来ている家なのに、妙な緊張感を覚え、
皆テレビの前に鎮座していました。
リビングには家主である友人の父親が、
いつものように淡々と煙草をふかしています。
当時の私達に競馬や麻雀を教え込んだのは、このオヤジでした。
一応職には就いていましたが、博打は文字通りハンパではない、
身も心もギャンブラーなオヤジでした。
いつでも冷静かつ大胆なこのオヤジが、競馬新聞を睨む時に光らせる眼は、
まさに獲物を狙うハンターのようでありました。

凱旋門賞。
緊張していたせいか、道中の展開はよく覚えていません。
しかし最後の直線でエルコンドルパサーが先頭に立ったときに、
オヤジの放った叫びとも言える声は、今でも私の耳の奥でその響きを残しています。
「よし勝ったっ!!」
最後にはモンジューに敗れてしまったエルコンドルパサーでしたが、
その健闘振りには素直に拍手を送りました。

競馬にはやはり、博打以外の要素が多分に含まれているのでしょう。
そうでなければ、勝つ事に対してのみ執着すべき博徒達が、
どうして熱い思いをたぎらせる事になりましょう。
「よし勝ったっ!!」
この一言で、勝利よりも大事なことがあるということを教えてくれたオヤジは、
今はもうこの世にはいません。

このコラムが掲載される頃には、もうキングジョージの結果は出ています。
ただどんな結果であろうとも、きっとオヤジは蓮の葉の上で、
いつものように煙草をふかしながら佇んでいるのありましょう。合掌。

 

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